多くの企業では、システムの保守が「変えない判断」の口実となり、要員の離脱やシステム障害といった受動的な要因が生じるまで、モダン化を決断しにくい。改修を重ねて属人化したシステムに人間が使われ、技術的な制約で新たな施策が見送られる状況は、経営の選択肢を狭めてしまう。さらに刷新時に重視される導入事例も、意思決定の「免責」として機能しているのが現状だ。
システム刷新の局面でも、多くの企業は「Fit&Gap」によって生じた差分を追加開発で埋め、過去のやり方を再現することで、システムの「再レガシー化」を招いてしまう。「Fit to Standard」はSaaSの恩恵を受け続けるための前提条件であり、標準を正として、自社の何が競争優位を生み、何を手放すべきかを見極める経営判断が重要になる。
サポート切れを待つ姿勢や目先の延命は、動き出すタイミングをベンダーに委ね、競合との差を自ら広げることを意味する。保守の本質は、現状を維持することにとどまらず、自社がどこで違いを生み出すのかという核を握り続けることにある。その核を守るためにやり方を変え続け、経営の手綱を自らの手に取り戻さなければならない。